【2025年2月現在】世論調査から見る、ウクライナ人の戦争に対する本音を分析

2025年2月現在、トランプ新政権はロシアの政府高官とサウジアラビアにて会談をもつなど、ウクライナでの戦争の停戦に向けた動きが活発化しています。ゼレンスキー大統領はウクライナなしでの停戦交渉はありえないと反発しています。ウクライナ社会が戦争に対して、どのように見ているか、「ウクライナなび」が世論調査の結果等を通じて調べてみました。

ゼレンスキー大統領の本当の支持率は?」と題した記事でも使用した、ウクライナの大手世論調査会社である「キーウ国際社会学研究所(KIIS)」と、「ラズムコフ・センター」による調査結果を元に以下では話を進めていきます。

戦争での勝利を信じるウクライナ人の割合は?

ラズムコフ・センターが2024年9月にウクライナにて行った調査によると、「ロシアとの戦争においてウクライナの勝利を信じますか』との質問に対し、「はい」または「どちらかというとはい」と答えた回答者は83%でした。一方で、「いいえ」または「どちらかというといいえ」と答えた回答者は11.4でした。

この設問に基づく調査をラズムコフ・センターは2022年8月から定期的に行っています。2022年8月は、「はい」+「どちらかというとはい」と答えた割合は、91.4%であり、それ以降も80-90%の水準でほとんど推移しています。

つまり、ロシアとの戦争において局面が関わる場面が何度もありましたが、ウクライナ人の大多数は、常にこの戦争におけるウクライナの勝利を信じていると言えそうです。

領土を諦める用意があるウクライナ人の割合は?

戦争が長引く中、ウクライナの一部の領土がロシアに占領されている事実がありますが、それをウクライナ人はどのように捉えているのでしょうか。

キーウ国際社会学研究所は、2022年5月から定期的に、「平和の実現のための領土の譲歩が可能か」との世論調査をしています。これによると、2022年5月から2023年10月までは、「いかなる場合においてもウクライナは領土を譲歩してはならない」と答えた人の割合は80%以上で推移していました。しかしながら、その後、徐々にその割合は減っていき、2024年12月の調査によると、51%となっています。その一方で、「早期の平和実現とウクライナの独立維持のため、領土の譲歩はやむをえない」と答えた人は38%まで上昇しました。

出典:https://kiis.com.ua/?lang=ukr&cat=reports&id=1465&page=2 を元に作成

ウクライナでの戦争が長引き、ロシアによる占領地を解放するのが難しい中、ウクライナ社会においてより現実的な見方が広がっているのが読み取れます。しかしながらそれでも依然として過半数以上が、いかなる領土の譲歩に反対とすることからも、ウクライナ人の徹底的な抗戦の意思を感じとることができます。

ウクライナ人は戦争にあとどれくらい耐えられるか?

キーウ国際社会学研究所は、「あとどれくらい戦争に耐えることができますか」との設問も、ウクライナ人に投げかけています。

2022年5月の調査によると、「必要であればいくらでも耐えられる」と答えた人の割合は71%でした。2024年2月においても、その割合は73%とほとんど変わりませんでした。しかし、それ以降の調査では、その割合が徐々に減ってきとり、2024年12月の調査では、、「必要であればいくらでも耐えられる」と答えた人の割合は57%となりました。また、「1年」と答えた人は3%、「半年」が3%、「数ヶ月」が18%、「答えられない」が18%でした。

戦争が長引くなか、ウクライナの社会において疲労感が溜まっているのは間違いないことがわかります。しかし、依然として過半数の人が徹底的な抗戦の意思を示しています。

ロシアとの交渉を始めるタイミングは?

ロシアとの交渉をいつ始めるかについては、さまざまな意見が出ています。ウクライナ人はこのテーマについて、どのように考えているのでしょうか。

ラズムコフ・センターが2024年9月にウクライナにて行った調査によると、「(ロシアとの交渉)は、平和を達成するための効果的な方法で、今すぐ活用すべきだ」との設問に対し、「はい」は35.2%、「いいえ」は47.8%でした。また、「ロシアとの交渉は2022年2月の全面侵攻以前の境界線までロシア軍を追い出してから行うべきだ」との設問に対し、「はい」が37.2%、「いいえ」は41.2%でした。また、「ロシアとの交渉は1991年の国境線までロシア軍を追い出してから行うべきだ」との設問に対し、「はい」が49.4%、「いいえ」は29.2%でした。

依然として、ロシアとの交渉を今すぐ始めた方がいいと思う人は少数派であり、ロシアとの交渉はロシアによる占領地を解放してから行うべきだと考える人の方が多いのがわかります。しかしながら、その差は大きいとは言えず、ウクライナ人にとっても、ロシアとの交渉を始めるタイミングに迷いが見えるように感じます。

結論

これらの世論調査を通じて見えてくることは、ウクライナ社会がロシアとの戦争に対して粘り強く戦う意思を示していることです。しかしながら、長期にわたる戦争により、疲労感が社会全体に広がり、ウクライナとしても戦場での現実に基づくより現実的な考えをする人が増えてきていることも読み解けます。