ウクライナの銀行トップ10を徹底解説

ウクライナの銀行の現状

2025年2月1日時点で、ウクライナ全土にある銀行は61を数えます(活動中のものに限る)。そのうち、26行が外国資本が入ったものであり、さらにその中で19行は外国資本100%のものになります。

ウクライナでは独立以降、銀行が雨後の筍のように設立される時代がありました。特に、オリガルヒが自身のビジネスのため、自ら銀行を設立するケースが目立ちました。2009年1月には、活動中の銀行は184行まで増加。その後、2014年のマイダーン革命、クリミア危機、ドンバス戦争を通じて、多数の銀行が倒産したり、ロシア系列の銀行がウクライナから撤退するなどの混乱を経験。その後、統廃合の時代を経て、2025年2月には61行まで集約されました。

現在の傾向としては、ウクライナ系の多くの銀行が統廃合の対象となったため、相対的にウクライナでの銀行数に占める外資系銀行の数が40%以上にまでなったことが挙げられます。また、2014年以降、ウクライナでは国営化された銀行が7行まで増えており、政府はこれらの民営化(売却)を進めたい方針ですが、それがまだ1つもうまくいっていないことがあります。

以下では、ウクライナの大手銀行トップ10を取り上げていきます。

1位:PrivatBank(プリヴァトバンク)

出典:Wikipedia

元々は、ウクライナ最大のオリガルヒの一人であるイーゴリ・コロモイスキー氏などによるPrivat(プリヴァト)グループの銀行。ウクライナ中部のドニプロ市(旧ドニプロペトロウシク)が発祥の地です。国内最大の銀行にまで成長しましたが、2016年に国有化され、コロモイスキー氏などのオリガルヒからは切り離されました。

2024年の売上は前年比38.79%増となる1016億UAH(約3657億円、1 UAH = 3.6円)を記録。2位以下を大きく引き離すウクライナ最大の銀行です。Privatの銀行アプリは広く市民に利用されており、社会インフラの一部を担っています。支店もウクライナ全土に張り巡らせています。国有化されましたが、店頭でのサービス品質の維持に努めています。

2024年の推定従業員数は16965人。

2位:OschadBank(オシチャドバンク)

正式名称は、Державний ощадний банк України (State Savings Bank of Ukraine、ウクライナ国立貯蓄銀行)ですが、通常は略称のОщадбанк(オシチャドバンク)と呼ばれます。ソ連に存在したオシチャドバンクから分離して1991年に設立されました。ウクライナ政府が100%の株式を持つ国営銀行です。

2024年の売上は前年比14.94%減の233億UAHで、国内2位。2024年の推定従業員数は15983人で、国内全土に1181店の支店が存在します。

なお、2014年からオシチャドバンクの取締役会長を長年務めたアンドリー・ピシュニー氏は、2025年3月現在、ウクライナ国立銀行の総裁を務めています。

3位:RaiffeisenBank(ライファイゼンバンク)

1992年に設立。2006年にオーストリアのライファイゼンバンクインターナショナルの子会社となる。2015年に欧州復興開発銀行(EBRD)が株式の30%を取得。2021年に従来の「ライファイゼンバンク・アヴァル」から、「ライファイゼンバンク (Райффайзен)」に改名。

2024年の売り上げは前年比16.51%増の225億UAHで、国内3位。民間銀行および外資系銀行としては国内1位。2024年の推定従業員数は5282人。

4位:PUMB(プンブ)

正式名称はПерший Український Міжнародний Банк(First Ukrainian International Bank、第一ウクライナ国際銀行)で、その頭文字をとってПУМБ(PUMB、プンブ)。ウクライナ最大のオリガルヒの一人であるリナート・アフメトフ氏が率いるSystem Capital Management(SCM)グループに属する、オリガルヒ系民間銀行です。

プンブ以外で、リナート・アフメトフ氏率いるSCMが株式の過半数を所有する企業は以下の通り:

  • Metinvest(メティンベスト) ー 鉱業および冶金会社グループ。ウクライナ最大の鉄鉱石・鉄鋼生産者。ウクライナ東部の工場がロシアによる全面侵攻で甚大な影響を受けた。
  • DTEK(デテック) ー ウクライナ最大電力グループ
  • Ukrtelecom(ウクルテレコム) ー ウクライナの固定および携帯電話事業者
  • メディアグループウクライナ ー TVチャンネル「ウクライナ」「フットボール1〜3」などを運営(2022年に放送を停止)
  • ツム百貨店(キーウ中央百貨店) ー キーウ中心にある高級百貨店
  • UMG Investments ー 資産運用会社
  • レムトランス ー ウクライナ最大級の鉄道貨物輸送会社
  • シャフタール・ドネツク ー ウクライナプレミアリーグで14回優勝のサッカークラブ

2024年の売り上げは前年比3.82%増の160億UAHで、国内4位。民間銀行としては国内2位で、非外資系としては国内1位。2024年の推定従業員数は6200人。

5位:UniversalBank(ユニバーサルバンク)

UniversalBank(ウニベルサルバンクまたはユニバーサルバンク)は、ウクライナのオリガルヒであるセルヒー・ティギプコ氏が率いるTASグループの子会社。なお、TASグループは他にもTaskombank(タスコムバンク)という銀行を所有する。

近年急激に売り上げを伸ばしており、その多くはネット銀行「モノバンク(Monobank)」の成功によるもの。モノバンクはその洗練されたモバイルアプリと、アプリ上でほぼ全てのサービスが完結できるのが大きな魅力のネット銀行であり、2017年のローンチ以来、利用者は940万人にも上っている(2025年3月現在)。モノバンクは、国内での銀行のライセンスをユニバーサルバンクから得ている。

2024年の売り上げは前年比2.6%増の157億UAHで、国内5位。2024年の推定従業員数は2637人。

6位:Ukrsibbank(ウクルシブバンク)

正式名称は、Ukrsibbank BNP Paribas Group。2006年に、パリに本社を置くフランスの多国籍メガバンクであるBNPパリバによる買収。その後、欧州復興開発銀行(EBRD)も資本参加し、2025年現在はBNPパリバが株式の60%を保有し、欧州復興開発銀行(EBRD)が40%を持つ。

2024年の売り上げは前年比22.58%増の154億UAHで、国内6位。2024年の推定従業員数は4225人。

7位:Sense Bank(センスバンク)

出典:https://sensebank.ua/about

2022年12月1日まで、Алфа Банк (Alfa Bank、アルファバンク)との名前で営業。当時は、ミハイル・フリードマンをはじめとするロシア系のオリガルヒにより所有されていた。2023年7月以降、株式の100%をウクライナ政府が保有しており、国有化された。

2024年の売り上げは前年比7.13%減の129億UAHで、国内7位。2024年の推定従業員数は4356人。

8位:OTP Bank(オーテーペーバンク)

ОПТ Банк (OTP Bank、オーテーペーバンクまたはオーティーピーバンク)は、ハンガリーの銀行グループ「OTP」のウクライナの子会社。2006年にウクライナに参入。

2023年には、OTPグループがロシアでの事業を継続していることから、ウクライナの国立汚職防止庁は、OTPを国際戦争スポンサーのリストに加えました。これに対し、ハンガリー政府は激しく反発。その結果、同年10月に、OTPをリストから外した経緯があります。

2024年の売り上げは前年比15.51%増の103億UAHで、国内8位。2024年の推定従業員数は2120人。

9位:UkrGasBank(ウクルガスバンク)

ウクライナ財務省が株式の約95%を保有しており、実質的に国有銀行化されている。

2024年の売り上げは前年比22.54%増の92億UAHで、国内9位。2024年の推定従業員数は3500人。

10位:Crédit Agricole Bank(クレディ・アグリコリ・バンク)

2006年にフランスの総合金融機関であるクレディ・アグリコにより買収され、現社名に。

2024年の売り上げは前年比36.58%増の90億UAH。2024年の推定従業員数は2200人。

出典:https://index.minfin.com.ua/ua/banks/stat/count/ https://opendatabot.ua/c/31227326 https://dou.ua/lenta/articles/bank-rating-2024/