アメリカのトランプ大統領は2025年1月、対外援助の一部停止に関する大統領令に署名しました。これにより、米国国際開発庁(USAID)が資金を提供していたプログラムにも大きな影響が出ています。ウクライナのメディアが、国内でUSAIDの支援を受けていた団体の一覧を発表していましたので、本記事にてその詳細について検証してみます。

出典:https://www.facebook.com/USAIDUkraine/
USAIDとは?
米国国際開発庁(USAID)とは、1961年に設置された、アメリカのあらゆる非軍事の海外援助を行う政府組織です。一説によると、年間の予算は400億ドル(約6兆円)と言われており、その潤沢な資金を使って、主に途上国での人道支援のほか、医療衛生、教育発展、民主主義強化、多文化共生社会の実現、女性の権利の擁護、性的少数者への支援などを行なってきました。
USAIDはウクライナにも多くの資金を割り振っており、特に2022年2月24日のロシアによる大規模侵攻以降は、予算がさらに大きく割り振られるようになりました。USAIDのサイトによると、2022年2月24日以降、人道支援に26億ドルが、開発援助に5億ドルが、直接の予算支援に300億ドルがウクライナに提供されました。
USAIDの停止によるウクライナの影響
ウクライナの関係者の話を聞くと、1月末からUSAIDウクライナのスタッフは多くが自宅待機になっている模様です。
USAIDのウェブサイトによると、2024年12月31日現在、ウクライナでは39のUSAIDプログラムが運営されており、総予算は42億8000万ドルとなっています。その内訳は以下の通り:
- 民主主義、人権、ガバナンス(10億9000万ドル)
- 経済発展(11億5000万ドル)
- 重要インフラ(14億ドル)
- ヘルスケア(3億8180万ドル)
- 移行期間および人道支援(2億5200万ドル)
ウクライナメディアが伝えるUSAIDの資金の受領者の一覧
ウクライナメディアのEkonomichna Pravda(エコノミチナ・プラウダ)は、サイト上に独自のリサーチの結果として、USAIDの資金を受領していた企業や団体の一覧を掲載しています。それによると、
- 「民主主義、人権、ガバナンス」: 17つのプロジェクトがあり、それらに関わるウクライナの団体・企業の合計は約720
- 「経済発展」: 7つのプロジェクトがあり、それらに関わるウクライナの団体・企業の合計は約500
- 「重要インフラ」: 4つのプロジェクトがあり、それらに関わるウクライナの団体・企業の合計は約100
- 「ヘルスケア」: 8つのプロジェクトがあり、それらに関わるウクライナの団体・企業の合計は約110
- 「移行期間および人道支援」: 1つのプロジェクトがあり、それらに関わるウクライナの団体・企業の合計は約40
団体・企業には、民間企業、NGO、NPO、政府機関、地方行政機関などが含まれます。
これらが全て停止されたとすると、ウクライナにとっては大きな衝撃と言えそうです。すでにこれまで資金援助を受けていた団体の中には、SNSなどを通じて新たな寄付を呼びかけるなど、対応に追われています。
ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は1月29日、政府に対し、ウクライナの国家予算から資金を調達できる優先プログラムのリストを決定するよう指示しました。
USAIDの停止に対するウクライナの反応
キーウ国際社会学研究所の2025年2月の調査によると、「USAIDからのプロジェクトへの資金提供がウクライナで停止されたことに対し、どう思うか」の設問に対して、「大きなネガティブな影響がある」と答えた人の割合は22%でした。「ある程度のネガティブな影響があるが、資金を浪費したり不要な活動への従事に対する正当な対応だと感じる」との答えが47%、「多くのプロジェクトは資金の浪費であり、影響がない」との答えが12%、「答えるのが難しい」が19%でした。
