ウクライナ、2024年の輸出および輸入総額を公開

ウクライナ国家統計局は2025年2月、2024年のウクライナの貿易統計の速報値を発表しました。本記事では、この貿易統計に基づき、2024年にウクライナがどのような国と何を輸出入したのか詳細に見ていきます。なお、以下の輸出入の統計は、商品の輸出入をもとにしたものであり、サービスの輸出入は含みません。

2024年のウクライナの輸出総額は?

2024年にウクライナは417億3310万ドル(約6兆2600億円、1ドル=150円)を輸出しました。これは前年に比較すると15.3%の増加になります。輸出が増加するのは2021年以来であり、ロシアによる全面侵攻後、初めて輸出が増加したことになります。しかしながら、2024年を2021年の輸出額である680億7230万ドルよりと比較するとまだ61.3%にとどまっており、いまだ戦前の水準には回復していないといえます。

輸出の増減の推移(月ごと、前年同月比) 出典:ウクライナ国家統計局

輸出額に占める割合が多かった品目は次の通りです:

  • 植物由来の製品:32.4%、135億2763万ドル(前年比15.5%増)   ※野菜、果物、お茶類、穀物、油脂植物の種子と果実などを含む
  • 植物由来の脂質および油:13.8%、57億5642万ドル(1.9%増)
  • 卑金属およびその製品:10.7%、44億5634万ドル(13.8%増)  ※鉄・鉄鋼およびその製品などを含む
  • 加工済み食品:9%、37億5572万ドル(14.8%増)
  • 鉱物製品:8.2%、34億3235万ドル(42.1%増)  ※鉱石・スラグ・灰、原油および石油・石油製品などを含む
  • 機械、装置・メカニズム、電気機器:7.5%、31億4290万ドル(19.9%増)  ※原子力発電関係の機械、電気機械などを含む
  • 動物由来の製品:3.9%、16億4352万ドル(前年比20.6%増)   ※食肉、魚、乳製品、鶏卵などを含む
  • 木材および木材製品:3.5%、14億6565万ドル(1.9%減)    

ウクライナの輸出が増加した大きな要因として、ウクライナのオデーサ港などを通じた海上輸送が回復してきたことが挙げられます。このルートを使い、ウクライナの農作物をはじめとして、様々な商品・製品を輸出できたことが伺えます。

2024年のウクライナの輸入総額は?

2024年にウクライナは707億5120万ドル(約10兆6129億円)を輸入しました。これは前年に比較すると、11.3%の増加となります。輸入が増加するのは、2023年に続き2年連続です。

輸入の増減の推移(月ごと、前年同月比) 出典:ウクライナ国家統計局

輸入額に占める割合が多かった品目は次の通りです:

  • 機械、装置・メカニズム、電気機器:21.3%、150億370万ドル(33.6%増)  ※原子力発電関係の機械、電気機械などを含む
  • 鉱物製品:12.9%、91億6214万ドル(13.8%減)  ※鉱石・スラグ・灰、原油および石油・石油製品などを含む
  • 陸上輸送手段、航空機、水上車両:12.8%、90億8860万ドル(15.8%増)  ※車、ドローンなどの航空機などを含む
  • 化学および化学関連産業の製品:11.4%、80億6508万ドル(8.4%増)  ※医薬品、肥料などを含む
  • 高分子材料、プラスチックおよびそれらの製品:5,5%、38億8085万ドル(4%増)
  • 卑金属およびその製品:5.5%、38億7390万ドル(15.2%増)  ※鉄・鉄鋼およびその製品などを含む
  • 加工済み食品:5.2%、36億5767万ドル(12.5%増)
  • 繊維素材および繊維製品:3.4%、23億9867万ドル(0.3%増)
  • 植物由来の製品:3.1%、22億2763万ドル(前年比5.4%増)   ※野菜、果物、お茶類、穀物、油脂植物の種子と果実などを含む

上記をみると、輸入が伸びた要因として、戦争の影響が大きいことがわかります。ロシアによるウクライナの発電所への攻撃により、その修復や強化のための機械の導入のほか、ドローンなどの購入にお金がかかっています。

2024年のウクライナの輸出入の差額は?

出典:国家統計局のデータをもとに作成

2024年のウクライナの輸出額から輸入額を引いた差額は、290億1810万ドルとなり、大幅な貿易赤字となりました。輸出入の推移のグラフを見てるとわかるとおり、2022年のロシアによる全面侵攻以降は、貿易が大きく落ち込む一方、輸入は戦前の水準まで回復してきており、それを受けて貿易赤字が大きくなっています。

今後の見通し

今後も戦争が長引くとなると、大幅な貿易赤字はなかなか改善しないことが予想されます。ウクライナとしては今後も海上輸送ルートを確保しながら、ウクライナ産の農作物や鉱物資源の輸出拡大を図る必要があります。また、ウクライナではサービスの輸出入に関しては、輸出が輸入を上回っていることもあり(つまりサービスにおいては貿易黒字、2023年の統計)、ITなどのサービス輸出において黒字を伸ばすことで、サービスを含めた貿易統計において、赤字額を減らしていく必要がありそうです。